前回,遺言書を書いても必ずしも紛争が予防できるとは限らないことをお話ししましたが,今回は,遺言書が原因で生じる紛争についてお話しします。
遺言書を作成される方に多いのは,遺産の一部について,これだけは誰それに渡したいという気持ちが強すぎて,その他の遺産について,すっかり忘れてしまう場合があるということです。
一番困るのは,「不動産をAに相続させる」とだけ書く書き方です。
この場合,他に預金や株式があり,相続人がさらにB,Cといた場合,預金や株式をA,B,Cで分けるのか,B,Cだけで分けるのか,また,どのような割合で分けるのかが全く分かりません。
その他の相続財産については,分割の割合が指定されていないので,法定相続分に依らざるを得ませんが,Aを加える場合,不動産を含めて法定相続分なのか,不動産は別枠なのかも不明です。
このような紛争は,仮に遺言書が「不動産をAに相続させる。その他の財産は法定相続分に従って相続させる。」と書いてあっても発生します。
このように遺言書を作成する人が自分の意図する内容を正確に文章にすることは,意外に難しいものです。
特に自筆証書遺言を誰にも相談せずに作るとこのような結果になりがちです。
自筆証書遺言については,形式を満たすことの重要性が強調されますが,きちんと形式を満たした遺言書は,相続財産の処理に関して,相続人を強力に拘束しますから,内容が不明確だと逆に遺言書自体が紛争の原因になってしまいます。
遺言書を作成する場合は,弁護士に相談されることをお勧めします。