前回の事務所便り記事で,現在では,ある程度の資産が残っているが経営が困難であるという債務者は,民事再生などの手続で再建を図る場合が多いということをお伝えしました。
民事再生手続は,債権者の多数決に基づいて債務の一部を免除してもらって経営の再建を図る手続ですが,どんな状態の会社でも利用できるというわけではありません。
今回は,法律的な観点よりも,もっと現実的な資金の観点から,民事再生手続によって経営を再建するための条件をご説明します。
民事再生手続を行うためには,会社にある程度の現金,預金などの残余があることが必要です。
民事再生手続の申立のためには,裁判所に予納金を納付する必要がありますが,その額は最低でも200万円程度,負債が1億円前後になると300万円から500万円程度は必要になります(負債が大きければ1000万円を超えるような高額の予納金が必要になります)。
また民事再生手続の申立を依頼する弁護士に対しても予納金の額以上の金額を着手金として支払う必要があります(弁護士によって異なります)。
さらに民事再生手続の申立によって,取引はすべて現金決済になりますから,当面の運転資金が必要です。
このようなことを考えると,最低でも1000万円程度,負債が数億円程度の場合は2000万円程度が手元資金として必要ですし,負債がさらに大きければ,必要な資金もそれに伴って大きくなります。
法律相談をしていると,会社に数百万円しか余裕資金がない状態で民事再生手続で再建ができると期待している方がいらっしゃいます。
しかし,ここまで説明してきたように民事再生手続の申立を行うためには,かなり資金に余裕のある状態で決断をするか,これらの資金を出してくれるスポンサーがいることが最低限必要になります。