世間では,離婚のときに支払われる金銭を大雑把に慰謝料と呼ぶ場合がありますが,これはとても不正確な言い方です。
離婚のときに当事者でやり取りされる金銭には,大きく分けて3種類のものがあります。
ひとつ目は文字通り慰謝料です。これは離婚の原因を作った当事者に法律的な責任がある場合に認められる精神的な損害賠償請求権です。
例えば,配偶者に暴力を振るったとか,他の異性と関係を持ったなどの場合です。
ふたつ目は財産分与です。夫婦が協力して作った財産が一方(多くは夫)だけの名義になっている場合に,相手方の協力による部分を分け与えるというもので,サラリーマンについては,多くの場合50%程度が認められます。
最後は養育費です。未成年の子どもがいる場合に子どもの養育をしない方が,養育をする方に支払うお金ですが,これは双方の収入に基づいて決められます(基準表があります)。
慰謝料と財産分与は,離婚のときに一括で支払われるのが通常ですが,養育費は月々の支払いになるのが普通です。
慰謝料については,夫婦のどちらかに離婚についての法律的な責任がある場合に支払われるものですから,性格の不一致などが原因の場合には,通常,支払われません。
財産分与は,共有財産の精算ですから,仮に妻に不貞行為などの離婚原因があったとしても,離婚に応じるのであれば,夫は支払う必要があります(妻の慰謝料支払義務とは別です)。
ただし,財産よりもローンなどの借金の方が多いなどの場合は,分ける財産がありませんから,財産分与はありませんし,結婚して間がなく,夫婦で作った財産がまだ無いような場合も財産分与はありません。
養育費については,本来的には子どもの権利ですので,引き取った方の親が勝手に放棄することはできません。
ただし,双方の収入に基づいて金額が決まりますので義務を負う方の収入が少ないと,金額も少なくなってしまいます。