前回まで,遺言書の紛争防止効果について,悲観的なことを書いてきましたが,一定の場合には,作成が必要になりますし,十分に効果があります。
相続人になるのは配偶者,子,直系尊属,兄弟姉妹です。
配偶者は生存していれば常に相続人になり,子は第1順位で相続人になり,死亡していてもその子や孫なども代襲相続ができます。この場合,相続人は配偶者と子(またはその代襲者)だけです。
子がおらず,その代襲相続もない場合は,まず直系尊属(両親や祖父母)が第2順位で相続人になり,それらがいないときは兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹については一代に限り(甥,姪)代襲相続が認められます。
この第2順位,第3順位の相続人については,配偶者がいても,相続割合はそれぞれ異なりますが,相続人になります。
従って,配偶者はいるが子や孫がいない場合にすべての遺産を配偶者に相続させるためには,遺言書が必要になります。
直系尊属や兄弟姉妹には,遺留分がありませんので,遺言書が有効である限り,その効果はほぼ確定的です。
また内縁の妻には相続権はありませんから,遺産を渡すためには遺言書を作成する必要があります。
このような場合でも,紛争が起きないとは断言できません。
例えば,配偶者の例であれば,被相続人が死亡する直前に婚姻したような場合,兄弟姉妹や代襲者である甥,姪などから遺言書の有効性が争われる場合などが想定されます。
また,内縁の妻の場合,離婚が成立していない戸籍上の妻や前妻との子の間で争いが生じる可能性があります。
しかし,これらの場合は,遺言書がなければ,その配偶者や内縁の妻は,そもそもそれらの権利を主張することもできませんから,遺言書の作成が必要不可欠な場合になります。