事務所便り記事
 
 
 
 
 

前回,契約について少し説明致しましたが,大抵の契約には履行の期限が決められています。

例えば売買契約では,商品の引渡の期限や代金の支払の期限が決められています。

このような期限が決められていないときにどうなるかというと,履行の請求をしたときに期限がきたとのと同じことになります(民法412条3項)。

期限に遅れた場合には,相手方に対して履行とともに遅延損害金を支払わなければなりませんし,契約を解除される場合もあります。

このように契約を締結する段階では,期限を決めておくことが重要なのですが,相手方が契約を守らなかった場合には事情が違ってきます。

期限というものは,その日までは履行をしなくてもよいという約束です。

相手から催促をされても「まだ期限が来ていない」と言って拒否できるのです。

民法136条1項が「期限は,債務者の利益のために定めたものと推定する。」と定めているのはそういう趣旨です。

依頼者の方が弁護士に相談される場合というのは,この期限が守られず,商品が引き渡されないとか,代金が支払われないという場合でしょう。

その場合,相手方はすでに期限を過ぎているわけですから,こちら側は「直ちに」商品を引き渡せとか,代金を支払えと言える状態にあります。

このような状況なのに弁護士に対して,期限を決めることを強く要望される方がいらっしゃいます。

このような場合に期限を決めると,すぐに請求できる権利があるのに,その日まで待つという契約になってしまいます。

こういうときには相手方に期限を決めさせるのではなく,こちら側で一方的に,何日までに履行されないときは提訴しますと宣言すれば足ります(すぐに提訴することもできますが,すぐに履行されると準備が無駄になってしまうので,このような通知をする意味はあります)。

平成28年3月

期限を切るということについて

 
 

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