前回,死後離婚などとも呼ばれることがある姻族関係終了届について,簡単に説明しました。
この手続の法律的な意義としては,親族間の扶養義務の範囲から外れるということがあります。
親族というのは,6親等内の血族と配偶者及び,3親等内の姻族をいうとされています(民法725条)。
本人から見ると配偶者(夫又は妻)の曾祖父母,祖父母,父母,叔父叔母,兄弟姉妹,甥姪までが含まれます。
そして,民法877条2項には,家庭裁判所は特別な事情があるときは3親等内の親族間においても扶養義務を負わせることができると規定されています。
そうすると,配偶者と死別した後に,配偶者の曾祖父母,祖父母,父母,叔父叔母,兄弟姉妹,甥姪について,扶養義務が課せられる可能性があることになります。
現実には個別の事情が考慮されますし,姻族関係終了届の提出だけで親族関係を終了させることができる立場の人に意思に反して扶養義務が負わされることはほとんどないと考えられます。
しかし,亡くなった夫(または妻)の血族との関係が思わしくなかった人は,抽象的にでもこのような可能性があることを嫌がり,姻族関係終了届を提出する場合が多いと思います。
この届出をしても,死亡した配偶者から相続した財産には何の影響もありません。
たとえ,その相続財産が死亡した配偶者の父母から相続したようなものであっても同様です。
現在の民法では,「家の財産」という観念はありません。
また,亡くなった夫と同じ墓に入りたくないという理由で姻族関係終了届を出すという話も聞きますが,このような事柄について,民法897条は「慣習に従って」としか規定していませんので,法律上,直接の関係はありません。