前回は損害賠償について,簡単に説明致しましたが,今回は,その内,慰謝料と言われるものについて説明します。
損害という言葉からすぐに連想されるのは財産的損害ですが,民法710条には財産以外の損害についても損害賠償の対象になることが規定されています。
財産以外の損害というのは精神的な損害のことで,名誉毀損の場合の謝罪広告を除けば,慰謝料という形で金銭による損害賠償がなされます。
例えば,他人に怪我をさせた場合,治療費や休業損害といった財産的損害を賠償しなければならないだけでなく,痛い思いをしたという精神的な苦痛に対しても賠償が必要であり,それが慰謝料(「慰藉料」とも書きます)です。
財産的損害であっても,その算定は必ずしも簡単ではないのですが,精神的な損害となると客観的に金額を決めることは大変に困難です。
しかし,日々大量に発生する交通事故による傷害について,ひとつひとつのケースごとに適切な慰謝料の額を考えることは大変ですし,かえって不公平な結果になる可能性もあります。
そこで,交通事故を大量に扱う裁判所で,入院期間や通院期間を基準にした慰謝料の算定表が作成されるようになり,これが後に公開されて一般的な基準として使用されています。
入通院期間を基準とすることについては,これらの期間が長ければ一般に怪我が重いと考えられるからです。ただし,通院に関しては飛び飛びの場合,実際の通院日数による調整が行われます。
この他に後遺障害の等級に基づく慰謝料や死亡慰謝料の基準なども作成されています。
交通事故に限らず,他人を死傷させた場合の慰謝料の計算には,一般的にこの算定表が使用されます。
ただし,この算定表は過失によって死傷させた場合の基準ですので,故意に他人を死傷させた場合については,この1.5倍から2倍くらいの額になると考えられます。