事務所便り記事
 
 
 
 
 

前回は慰謝料の額について,裁判所が作成した基準表があることを説明しました。

裁判所の基準表は,一般的なものとして,東京地裁が作成したものと大阪地裁が作成したものがありますが,名古屋地裁が作成したものもあり,それぞれの地域を中心として使用されています。

内容にも若干の差がありますが,あくまでも基準ですので,その違いがそれほど問題になることはありません。

慰謝料ではありませんが,以前は逸失利益の計算方法に東京地裁と大阪地裁で違いがあり,就労前の未成年の子どもが死亡した場合の金額が大きく異なることが問題視されたことがありました。これについては大阪地裁が東京地裁の方式に合せる形で解決しました(大阪地裁の計算方法の方が合理的だったという考え方の裁判官もいますし,実は私もそう考えています)。

それはともかくとして,慰謝料の基準には,その他に任意保険会社が作成したものと日弁連交通事故相談センターが作成したものがあります。

後者は,裁判所の基準表より若干高額ですが,ほとんど違いません。

問題は,任意保険会社が作成した基準表で,これは裁判所の基準よりも極めて低額で,半分にも満たない額です。

弁護士に依頼せずに交渉すると,任意保険会社が自社の基準表に基づいて,低額で提示をしてきます。

前回説明した通り,慰藉料の額は法律上,決まっている訳ではなく,裁判所の基準表もあくまで目安で,法律的な拘束力はありませんので,任意保険会社が自社で基準を作成し,それで交渉すること自体が違法というわけではありません。

ただ,このような事情なので,交通事故に関しては弁護士に依頼した方が,有利な解決になる場合が多いということになります。

なお,自賠責保険の基準表は,保険金支払の基準であり,損害賠償としての慰謝料額そのものの基準ではありませんので注意が必要です。

平成30年2月

慰謝料の基準

 
 

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