事務所便り記事
 
 
 
 
 

損害賠償について,よく問題となる点として過失相殺があります。

損害を受けた人の側に落ち度などがある場合に損害額を減らす制度であり,債務不履行(契約違反)については民法418条に,不法行為については民法722条2項に規定があります。

民法418条と722条2項は文言が若干異なりますが,学説上も実務上も同じように扱うとされています。

「過失」相殺とされていますが,債務不履行や不法行為の要件される「過失」と同じではなく,損害賠償額の減額が適当と考えられるような事情という程度の意味です。

債務不履行についての過失相殺というのは,例えば契約の履行のために必要な情報を注文者側が伝え忘れたというような場合が考えられます。

不法行為についての過失相殺は,事故でけがをしたときに,被害者にも不注意な点があったというような場合です。

同じような例ですが,交通事故については,他の事故に比べて,事案が極めて多数発生しますので,慰謝料と同じように裁判所が過失相殺率の基準表を作成して公表しています。

以前は取り上げられる事例も比較的少なかったのですが,現在は歩行者対四輪車・単車,歩行者対自転車,四輪車同士,単車対四輪車,自転車対四輪車・単車,高速道路上事故,駐車場内事故と極めて多数の事例について掲載されるようになってきました。

それぞれについて,進行方向,信号の有る無し,優先関係などに分けた上,修正要素という項目を加えて,詳細に認定ができるようにされています。

しかし,実際の事故は多種多様であり,どの表に該当するのかが争いになったり,どの表にも該当しない事故もあります。

そのような場合は,最終的に裁判官が類似の表を参考にしたり,場合によっては,一から過失相殺率を考えて判断をしますが,基準がないため同じような事故でも,裁判官の考え方でかなり過失相殺率が変わってきます。

平成30年3月

過失相殺について

 
 

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